■時間外労働等改善助成金とは
2019年4月から施行された『働き方改革』において、「長時間労働の是正」、「正規・非正規の不合理な処遇差の解消」、「多様な働き方の実現」という3つが柱となり、労働基準法等の法改正や、制度の創設がおこなわれおります。
時間外労働等改善助成金の制度はその1つであり、中小企業に対する時間外労働の上限規制等をおこなう一方で、中小企業における労働時間の設定の改善を促進することを目的としています。
■『働き方改革』の背景には
「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面しています。
こうした中、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題になっています。
■時間外労働等改善助成金の中身について
令和2年度の制度内容は以下の5つのコースに分かれています。
このページでは『時間外労働上限設定コース』を説明しております。
- 時間外労働上限設定コース
- 勤務間インターバル導入コース
- 職場意識改善コース
- 団体推進コース
- テレワークコース
時間外労働等改善助成金
1.時間外労働上限設定コース
■助成額(支給額)
「成果目標」を達成すると、
対象となる取組の実施に要した経費の「一部」が、
成果目標の達成状況に応じて支給されます。
※助成額は、以下のいずれか低い方の額となります。
①1企業当たりの上限200万円
②上限設定の上限額及び休日加算額の合計額(※1)
③対象経費の合計額×補助率3/4(※2)
(※1)事業実施前と事業実施後の状況により変動。
上限設定の上限額は、50~150万円。

休日加算額は、25~100万円の範囲。

(※2)常時使用する労働者数が30名以下かつ、支給対象の取組(後述)の
6から10を実施し、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5
【成果目標】
・成果目標①:時間外労働時間数で月45時間以下かつ、年間360時間以下に設定
・成果目標②:時間外労働時間数で月45時間を超え月60時間以下かつ、年間720時間以下に設定
・成果目標③:時間外労働時間数で月60時間を超え、時間外労働時間数及び法定休日における労働時間数の合計で月80時間以下かつ、時間外労働時間数で年間720時間以下に設定
上記の成果目標に加えて、週休2日制の導入に向けて、4週当たり5日から8日以上の範囲内で休日を増加させることを成果目標に加えることができます。
①労務管理担当者に対する研修
②労働者に対する研修、周知・啓発
③外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)によるコンサルティング④就業規則・労使協定等の作成・変更
⑤人材確保に向けた取組
⑥労務管理用ソフトウェアの導入・更新
⑦労務管理用機器の導入・更新
⑧デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
⑨テレワーク用通信機器の導入・更新
⑩労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
※研修には、業務研修も含みます。
※原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません。
■この助成金の解説
時間外労働上限設定コースは、長時間労働の見直しのため、働く時間の縮減や時間外労働の上限設定に取り組む中小企業を支援する助成金です。
助成金の支給額の一例としては、従前の36協定で時間外労働時間数が月60時間を超えていてその実績を有する事業場が、月45時間以下かつ年間360時間以下に短縮した場合、支給対象となる取り組みにかかった経費の3/4(上限100万円)が助成されます
■対象となる事業主
支給対象となる事業主は、次のいずれにも該当する中小事業主。
※中小企業事業主とは(以下の要件を満たす企業)

①労働者災害補償保険の適用事業主であること
②平成29年度又は平成30年度において「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準(限度基準告示)」に規定する限度時間を超える内容の時間外・休日労働に関する協定(特別条項付き36協定)を締結していて、実際に時間外労働及び休日労働を複数月行った労働者(単月に複数名行った場合も可)がいること。
※限度基準告示第5条で適用が除外されている事業又は業務(建設の事業、自動車運転業務に係る事業等)を行う労働者がいる事業場も該当するものとする。
■まとめ
本助成金では中小企業・小規模事業者における労働環境改善(労働時間の設定の改善)の推進を目的としています。
具体的に業務の効率化し生産性を向上さる為に設備・機器等を導入したり、労働時間を正確に管理できるように労務管理用機器やソフトウェアを導入するなど、労働時間の短縮、時間外労働の上限設定等に取り組む事業主に対して取り組みのために支出した費用の一部が助成されるものです。
国が推進する「働き方改革」が本格的にスタートし、大企業に対しては2019年4月からすでに適用されていましたが、2020年4月からは、中小企業に対しても時間外労働の上限規制が適用されます。
働き方改革が政府の重要案件であることをかんがみれば、これに近い制度が引き続き設けられると考えられます。